連載

2025.12.12

30年の時を経て”奇跡の復刊”を果たしたフィギュアスケート小説 作者の小手鞠るいさんが語る「滑る芸術」の魅力とは

東京都内の書店に並んだ小手鞠るいさんの『ガラスの森』

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 恋愛小説の名手、小手鞠(こでまり)るいさんが1992年に本名で刊行した幻のデビュー作『ガラスの森』が今年、ハヤカワ文庫で復刊された。小学生の時にこの本を読んでずっと心に残っていたという早川書房の編集者が、フィギュアスケートファンの友人に読ませたいと思い、復刊に動いた。小手鞠さんにとっても「思い入れの深い作品」の“奇跡の復刊”だ。なぜフィギュアを題材に選んだのか。フィギュアを小説にする面白さはどこにあったのか。アメリカ・ニューヨーク州ウッドストック在住の小手鞠さんにメールでインタビューをした。(インタビュー・森原龍介)

『ガラスの森』あらすじ

 幼い頃にフィギュアスケートを始めながら、けがをきっかけに滑れなくなってしまった主人公の可南子(かなこ)が、二つ年上の流(ながる)とペアを組み、世界選手権を目指す物語。10代半ばの可南子がスケートの技術と芸術性を深めながら成長していく過程に、流への一途な思いが重なる。少女小説の純粋さと、スポーツ小説のダイナミズムが楽しめる唯一無二の作品だ。ハヤカワ文庫版は『ガラスの森』と続編の『はだしで海へ』の2冊を合本し再刊された。

知らなかったからこそ、生き生き書けた

 -なぜフィギュアスケートを題材にしようと思ったのでしょう。

 「ずっと昔から、小説家になりたい(特に恋愛小説)、そのために、切ない恋愛小説を書きたいと思っていて、さまざまな設定をぐるぐる考えているうちに、ぱっと思いついたのがフィギュアスケートのペアでした。自分でもなぜ、このアイディアが浮かんできたのか、まったく謎なんです!なぜなら、わたし自身はスケートを滑ったこともなく、また当時はそんなにファンでもなかったからです」

森原 龍介

この記事を書いた人

森原 龍介 (ryusuke-morihara)

2005年共同通信社入社。京都支局、札幌支社編集部などを経て2013年より文化部。文芸、論壇、ポップスなどを取材。小手鞠さんの『ガラスの森』を読んで、古き良きコバルト文庫の少女小説のたたずまいを思い出しました。ちなみに当時、好きだったのは久美沙織さんの『丘の家のミッキー』です。

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