映画初出演の高橋大輔さんに「初めてと思えない」と高評価 故郷倉敷舞台の『蔵のある街』試写会 貴重なメガネ姿も

記者会見する「蔵のある街」で映画初出演のフィギュアスケート男子の元世界王者高橋大輔さん=2024年8月、岡山県倉敷市

 フィギュアスケートの元世界王者、高橋大輔さん(39)が映画初出演した「蔵のある街」の試写会が16日、東京都内であった。岡山県倉敷市を舞台にした103分の作品で、監督・脚本を担った平松恵美子さんをはじめ、美術館の学芸員、古城緑郎(こじょう・ろくろう)役を演じた高橋さん、女子高生の母親役を演じたMEGUMIさんらは同市の出身。高橋さんは堂々とした演技を見せ、配給会社の担当者は「初めてとは思えない。落ち着きのある声も素晴らしい」と高く評価していた。
 
 倉敷市の美観地区を舞台に、幼なじみの高校生3人が、自閉症の兄のために「小高い山から花火を打ち上げる」との約束を果たすそうと奮闘する物語。高橋さんは温かい目で3人を支える重要な役回りで、珍しいメガネ姿の場面もある。山田洋次監督の助監督を長年務めた平松さんから出演のオファーを受けた。

撮影現場で平松恵美子監督と話す高橋大輔さん(左)=2024年7月、岡山県倉敷市(ⓒ2022 映画「蔵のある街」実行委員会)

 この日は平松さんが舞台あいさつし、制作において①能登半島地震②新型コロナウイルス禍③子ども―の3点を意識したと説明。

 「2024年に撮影したのですが、その元旦に能登で(地震があり)街の姿は決して永遠ではない、映像として物語としてとどめておくのは価値があるのだろうというのが1点」

 「コロナ禍もありました。いろんなつらいこともありましたし、その中でも良かったなと思っているのがサプライズ花火。エッセンシャルワーカーへの感謝の気持ちを込めて上げたものです。他者のことを思いやって上げられた花火があった、思いやりの気持ちがあったということを忘れてはいけないという点」

 「三つ目は子どもたちが夢を持てるような世界でないといけないということ。そのためには子どもたち自身というよりは、周りにいる大人たちに責任があるだろうということ。その3点を話して作りました」と思いを語った。
 
 今月25日にMOVIX倉敷で先行公開し、倉敷美観地区の中心を流れる倉敷川で高橋さんも出席する川舟パレードや初日舞台あいさつも予定されている。
 
 全国公開は8月22日。7月29日には新宿ピカデリーで完成披露上映会があり、高橋大輔さんら出演者が登壇する。

映画『蔵のある街』公式サイト

作品の背景

頑張って生きるあの人に、笑顔と希望を届けたい
 高校生たちの強い願いは、街中の人々を巻き込んで、
  やがて大きな希望になっていく――
 
 「約束じゃ。この街に、でっかくて綺麗な花火を上げちゃる」自閉症の青年と、夢をあきらめかけている同級生を励まそうと、とっさに口から飛び出した約束。その言葉が、街に思いがけない波紋を呼び起こす!
 
 無謀な計画だと笑われても、厳しい現実にくじけそうになっても、ひたむきに突き進む。そんな高校生たちの強い願いは、やがて大人たちを巻き込み、大きな希望になっていく——。
 
 この物語が生まれたきっかけは、2020年から続いたコロナ禍の最中、日本全国の約300もの街で開催された「サプライズ花火」。過酷な環境で働くエッセンシャルワーカーへの感謝、楽しみを奪われた子どもたちへのエール、今は会えない人との再会を願う気持ちなど、さまざまな思いをこめた花火が夜空に打ち上げられ、人々に明るい笑顔と希望をもたらした。そして2025年。今を生きるすべての人たちに向けた“応援の花火”が、爽やかなひと夏の青春物語とともにスクリーンに打ち上がる!

あらすじ

豊かな自然と産業が共存し、
 美観地区には古い街並みが残る岡山県倉敷市。

 この街で暮らす高校生の蒼、紅子、祈一は小学校からの幼なじみ。絵が好きで天真爛漫だった紅子に、蒼はほのかな思いを抱いていた。

 ある日蒼と祈一は、紅子の兄で自閉スペクトラム症のきょんくんが、神社の高い木の上で大声で叫んでいる所に出くわす。紅子は、きょんくんは「幼い頃に家族で見た打上花火を見ている」と話す。兄を木から降ろそうと無茶をする紅子を止めようとした蒼は、とっさに「今度、ここで打上花火を見せちゃる」ときょんくんに約束してしまう。きょんくんを無事に木から降ろし、得意がる蒼だったが、紅子は「蒼と祈一のあほ!」と叫んで立ち去ってしまう。
 
 後日、神社で再会した紅子は、目に涙を浮かべながら蒼と祈一に怒りをぶつける。
母が家を出てから、酒浸りの父と兄を支えてきた紅子にとって、打上花火は家族4人で過ごした幼い頃の大事な思い出だった。「この街に花火を上げる」という口先だけの約束は、知らず知らずのうちに兄妹を傷つけていたのだ。
 
 そのことを知った蒼と祈一は、きょんくんとの約束を果たそうと、ジャズ喫茶で知り合った学芸員の古城から「100人分の署名が集まったら協力する」という約束を取り付ける。しかし、100人くらいすぐに集まるだろうという期待は見事に外れ、ふたりは「街に花火を上げる」という約束の重さと、高校生の彼らにはどうすることも出来ない現実を思い知ることになる――。

『蔵のある街』倉敷公開記念 川舟パレード 開催決定

 

映画『蔵のある街』MOVIX倉敷初日舞台挨拶 開催決定

 

映画『蔵のある街』新宿ピカデリー完成披露上映会 開催決定
井上 将志

この記事を書いた人

井上 将志 (いのうえ・まさし)

2003年共同通信入社。名古屋でプロ野球中日、フィギュアスケート、本社運動部でフィギュア、体操、東京五輪組織委員会を中心に担当。五輪は10年バンクーバーから夏冬計7大会を取材した。ジュネーブ支局時代は欧州を中心に世界各地をカバー。東京都出身。