2025年12月に、アイドルグループ『NMB48』を卒業し、俳優としての道を歩み始めたばかりの川上千尋さんは、小学1年から8年間フィギュアスケートに打ち込み、エンターテインメントの世界に飛び込みました。学校生活を送りながらスケートリンクに通い、友野一希選手らと練習を重ね切磋琢磨していたそうです。ミラノ・コルティナ冬季オリンピックを前に、自身の活動の原点を振り返ってもらいながら、競技の魅力について聞きしました。上下でお届けします。(聞き手 前山千尋、品川絵里)
頑張った学校生活との両立
―川上さんはバッジテストの6級をお持ちだとお聞きしました。高いレベルだと思うのですが、どんなきっかけでフィギュアスケートを始めたんですか?
「トリノオリンピックで金メダルを取った荒川静香さんのイナバウアーのニュースを見たのがきっかけです。その日は休みの日だったんですが、家族で見ていて、『スケート滑りに行こう!』となって。それがきっかけで、うちの近所にあった上野芝スケートクラブの教室に通うようになりました」
―初めて滑った時のことは覚えていますか?
「あまり良くない風に聞こえるかもしれないんですが(笑)、みんなが苦戦している中、割とスイスイと滑れたんです。『ちょっとこれいけるんじゃない?』って思って。母にも『才能あるんちゃう?』って勧められました。スケート教室にはテストがあってクリアすると、もっと上のレベルのテストを受ける仕組みだったんですが、それに受けるうちにのめり込んでいきました。スケーティングがうまくできたらOK、バックでクロスしながら走ることができたらOKといった感じでした」
―元フィギュアスケート選手で今は国学院大学准教授の町田樹さんを指導した大西勝敬(日本フィギュアスケートインストラクター協会副会長)さんに指導を受けていたそうですね。
「はい。うちの近くにあった上野芝スケートクラブでテストを受けるうちに、臨海スケートクラブ(大阪府立臨海スポーツセンター)の大西先生を紹介してもらうことになって通うことになりました。友野一希さんや須本光希さんと同じリンクでした」
―町田さんとは接点はあったんですか?
「接点はなかったんですが、田中刑事さんとはありましたね」
―町田さんや田中さんがオリンピックに出たときには応援されたりとか?
「そうですね。友達と見ていて、知ってるよ!みたいな感じで言ったり。すごく誇らしい活躍をされていたので応援していましたね」
―練習はどんな感じでしていたんですか?
「月曜から土曜日まで、朝練、深夜練もやっていました。母がずっと送り迎えをしてくれていて、朝練習に行ってから学校に行くみたいな感じで、学校との両立を頑張っていました」
―全関西フィギュアスケート選手権大会でも2位になったと聞きましたが、これはいつごろですか。
「小学校2、3年生の頃です。自分はそんなにうまくないと思っていたんですが、運が良かったなと思います」
友野選手の足さばき、全選手を魅了
―今も現役で活躍する友野一希さんといっしょのリンクで練習していたということですが、覚えていることってありますか?
「友野さんは当時から足さばきが尋常じゃなくて。つま先でするステップとか。スケートリンクにいる全選手を魅了したことを覚えています」
―話をすることもありましたか?
「鬼ごっこを練習の合間にしてました。当時山本草太さんも一緒だったんですが、男女いっしょになって。トレーニングも兼ねているような感じでしたね」
―フィギュアスケートのクラブって、いろんな地域にあると思うんですが、地域のカラーってあるんでしょうか?
「どちらかというと、関西の中だけでもカラーがあったなと思います。クラブチームによって、ガツガツ行くタイプだったり、フィギュアスケートからイメージするような感じのおしとやかなタイプだったり」
―地域というより、クラブによって雰囲気が違うんですかね。
「同じリンクで滑っていると、性格が寄っていく気がします」
―ちなみに、川上さんがいたクラブはどんな雰囲気だったんですか?
「気が強かったですね(笑)。負けたくない気持ちが強い。でも仲間意識があって、女子と男子が関係なく何でも話し合えて、恥ずかしいという感情もなくて、みんなで頑張るぞって感じでした」
「強さ」感じるプログラムに憧れ
―荒川さんのニュースがスケートを始めるきっかけということでしたが、目標にしている選手はいましたか?
「テレビで見て目標にしていたのが、浅田真央さんと金姸児(キム・ヨナ)さんです」
―浅田さんには大会でお花を渡す場面もあったんですよね。
「バンクーバー冬季オリンピック(2010年)の直前の全日本選手権でお花を渡しました。その時、『頑張ってね』って言葉をかけてくださって。そこから頑張っていたんですが、わたしはアイドルの道に行ってしまって。でもテレビのバラエティー番組に、浅田さんとお姉さんの舞さんが出演されて、その時に感謝を伝えることはできました。番組の中で実はわたしが(感極まって)大泣きしてしまって、『フィギュアスケートをやっていた時に大好きだったんです』と直接お話ししました」
―浅田さんとキム・ヨナさん、それぞれ好きな演目ってありますか?
「浅田さんの『仮面舞踏会』、あとキム・ヨナさんの『007』が好きでした。お二人が強い女性に見えて、それが本当に自分のモチベーションにつながって、フィギュアスケートの練習の糧にしていました。『強さ』を感じるプログラムに憧れていました」
―かわいいイメージがある川上さんがかっこよさに引かれるというのは少し意外です。
「昔から自分にないものが、かっこよさだと思っていて…。お二人の演技を見て、自分にもできるかもしれないと思って、トリプルにも挑戦してみたりもしました」
得意技はダブルサルコウ
―すごいですね!ちなみに、得意技ってありましたか?
「わたしはサルコウがすごく得意でした。ダブルサルコウなんですが。トリプルサルコウの練習中にアイドルのオーディションを受けてしまって、跳べずじまいになりました」
―ジャンプはどこまで跳んでいたんですか?
「ダブルアクセルは跳べました。たしか当時はバッジテストの6級に入っていたと思います」
―ご自身の演技で思い出深いものってありますか?
「『シング・シング・シング』というプログラムです。成績はあまり良くなかったんですが、踊っていてすごく楽しかったなっていうのを覚えています」
―どなたの振り付けですか?
「(平池大人チームの)杉田(由香子)先生です」
しなやかさの中の闘志がかっこいい
―今回のオリンピックで注目している選手はいますか?
「坂本花織選手です。わたしと同じ時期に頑張っていて、大会の名簿でもよく名前を見ました。レベルは全然違いましたが、切磋琢磨した一人だからこそ応援しています」
―坂本さんのどんなところが楽しみですか?
「テレビの一視聴者として、坂本さんが選考の時に流されていた涙が本当に印象的でした。それを見て、本当に良かったという気持ちでした。オリンピックでも坂本選手が金メダルを取って喜んでいる姿をぜひ見たいなって思います」
―女子の競技が好きですか?
「女子のしなやかさは、本来のフィギュアスケートって感じの演技でそれが好きです。男子はスピード感、4回転とかどんどん跳んじゃうので、レベルの高さにいつも驚愕していて、どっちも目が離せません。(両方見るのが)忙しいと思いながら見ています」
―男子もすごいですよね。
「トリプルでもあんなに難しかったのに、もう一回転跳べるんだっていうのが、経験者からすると、不思議で。どんなトレーニングしているんだろうって、すごく興味があります」
―さきほどしなやかさのお話が出たんですが、それがフィギュアスケートの魅力でしょうか?
「わたしは一つの武器だと思っていて、しなやかさの中にある闘志がすごくかっこいいなと思っていましたし、自分が競技をやめてからもそこにすごくパワーをもらっていました。男女ともにもちろんしなやかなんですが、女子特有の体のくねりだったり、それこそビールマンスピンとかって、女子だからこそ、このきれいさが出るんじゃないかって思いながら見ていました」
【下】に続く
川上千尋
かわかみ・ちひろ 1998年生まれ。大阪府出身。俳優。2025年12月にアイドルグループ「NMB48」を卒業した。


















