インタビュー

2026.02.03

人気アニメ「メダリスト」の声優・春瀬なつみさんに聞くオリンピックの楽しみ方 小さな差が勝負を分けるスポーツ 【上】

SNSでシェア

 フィギュアスケートを題材にした人気アニメ『メダリスト』で主人公、結束いのり役の声優、春瀬なつみさんは大のフィギュアスケートファンで、15年以上競技を見てきたそうです。そんな春瀬さんにとって、フィギュアスケートの魅力、4年に一度のオリンピックの楽しみとは?

 上、中、下の3回にわたり、たっぷりと語っていただきました。

ファンとしても貴重な大会

春瀬なつみさん

 ―春瀬さんは日頃から、国内の地方大会など、いろいろな大会をご覧になっているとお聞きました。フィギュアスケートファンとして、オリンピックというのは、どんな大会だと受け止めていますか?

 「オリンピックを目指して頑張っている選手の方はとても多いですし、オリンピックを機に引退したり、集大成として一つの節目とされたりする方もいらっしゃいます。いろんな気持ちで臨んでいる方がいて、ファンとしても4年に一度の大会というのは貴重で、それを見守らせていただく特別感があるなという風に思いますね」

 ―フィギュアスケート人生を終える方もいらっしゃったり、いろんな人生が交錯する時でもありますよね。

 「引退を表明している坂本花織選手や、前回のオリンピック代表だった樋口新葉選手のように、今までスケート界をずっと引っ張ってくださった方々が引退されるシーズンです。長く応援している者としては、一つの時代がまた終わってしまうので寂しい気持ちもあります。でも、皆さんが引っ張ってこられたスケート界はとても輝かしいものでもあったと思うので、素敵なスケートをたくさん見せていただいたことに対して感謝の気持ちでいっぱいです」

リンクの背景も記憶

バンクーバー大会 男子SP 演技する高橋大輔=2010年2月16日、パシフィックコロシアム(共同)

 ―春瀬さんは2010年のバンクーバー大会から、フィギュアスケート観戦にのめり込むようになったんですよね。

 「そうなんです。トリノ大会も見てはいたんですけど、本格的にファンになったのはバンクーバー大会のシーズンがきっかけです。それから15、6年くらいずっと好きです」

 ―バンクーバーでも日本選手が活躍していました。何かこの演技が良かったとか覚えていらっしゃいますか?

 「高橋大輔さんや浅田真央さん、鈴木明子さん、安藤美姫さん、本当にいまだに語り継がれるレジェンドスケーターの方々がいらっしゃった大会でした。印象に残る演技がたくさんあります。世間の注目を集めていて、本当にプレッシャーがある中で、たった一人で氷の上に立って演技をしている姿にすごく引き付けられて応援したくなりました」

 「もちろん、海外の選手もそれぞれにプレッシャーを背負って戦っていらっしゃることは同じです。大会をきっかけに、こんな選手も海外にいるんだと知ることもできました。4年に一回というタイミングにちょうど選手のピークが合ったり、照準があったりすることで、とても素晴らしい演技を見せていただけることは特別だなと思っていて一瞬一瞬を覚えています」

 「それから、スケートリンクを囲む壁が世界選手権なんかの場合ですと、だいたい広告のバナーになることが多いんですが、オリンピックの場合は、毎回大会のカラーになっています。平昌だったら紫、トリノだったら赤っぽい感じで。そういった背景の景色まで自分の中では強烈に印象に残っていて、どの大会も思い出します」

 ―そこまで見たことがなかったですが、言われてみれば…、確かに。今回はどんな感じなんだろうとちょっと気になります。

北京大会のフィギュアスケート女子で銅メダルを獲得し、日の丸を掲げ喜ぶ坂本花織。右は中野園子コーチ=2022年2月17日、北京(共同)

 「色だけじゃなく、北京だったらパンダのキャラクターがいたり。最近は冬季オリンピックはメダル授与が演技の直後じゃないことがあるんですが、表彰台でもらう物がマスコットだったりすることもあって。選手がマスコットを持っている姿もオリンピックだなぁって感じで思ったりもします」

個性が出る曲選び

 ―フィギュアスケートを普段見ていない方がここに注目したらいいとか、ここを見たら面白いみたいなことってありますか。例えば、音楽や衣装からですと楽しめるでしょうか?

 「そうですね、音楽は、オリンピックシーズンにとてもエモーショナルな曲を選ばれる方がいらっしゃいます。あと、ポピュラーな、みんなが知ってる曲を選ぶ方も多いので、『この曲は知ってる』といった感じで見ていただいても素敵だなと思います」

スケートカナダのイザボー レビト。「ニューシネマパラダイス」の演技=2025年11月、サスカトゥーン(カナダ)

 「それから、アメリカの女子代表で、イタリアにルーツのあるイザボー・レビト選手はイタリアの映画『ニューシネマパラダイス』の楽曲を使っていて、ミラノ大会ならではの曲を選んでいます。『これイタリアの曲だ』と、わかる方は楽しめるんじゃないでしょうか。でも、イタリアのララ・ナキ・グットマン選手はイタリア開催なので、自国ならではの曲を持ってくるのかなと思っていたら、『ジョーズ』を選んでいます(笑)」

 ―『ジョーズ』で踊るんですね(笑)。

 「そうなんです(笑)。音楽の選び方一つとっても、選手の個性が出ます」

 ―オリンピックにエモーショナルな音楽を選ぶ人もいらっしゃるとおっしゃったんですが、それはどういう意味ですか?

 「オリンピックが最後の選手もいますよね。坂本花織選手は今回が最後なので、ご自身でエモーショナルな曲を選んでいます。『自分のスケート人生を表現するならこの曲』という選手もいらっしゃるんじゃないかな。長いスケート人生の中で、コーチとの思い出だったりとか、いろんな思いを詰め込んでいるのかなと思います。なので、つい良い演技を見ると泣いてしまうことはありますね」

 ―演技の中であんなことがあったな、こんなことがあったなっていうのを思い出す瞬間がある?

 「ありますね~。『苦労していたな』というジャンプが、ここ一番っていう時に決まると、『わあっ!』と泣いちゃいます。それから、アメリカのネイサン・チェン選手は、最初に出たオリンピックで(メダルの)本命の一人に見られていたのに、ショートプログラムでうまく結果が出せず、でも次の大会でリベンジできたということもあった時は思い出しました。オリンピックだけではないんですが、私はそういうことがいろんな大会で発生するタイプで。ふふふ(笑)」

魅了された鈴木明子さんのステップ

バンクーバー大会女子フリー 鈴木明子さんの演技=パシフィックコロシアム(共同)

 ―技についてはどう見たら良いでしょうか?

 「演技では、ジャンプもステップも、どっちもお勧めしたいです。ステップが魅力的な選手というのは、ステップをした一瞬で見ている人を魅了してしまう力があります。氷の上で動きを止めるとか、リズムに乗って滑るっていうのは想像以上に難しいことなんです。すごくレベルの高いことを、選手の方たちは簡単そうにやってるんだなっていうことも、ぜひ注目してみてください。私が最初に魅了されたのはバンクーバー大会での鈴木明子さんのステップ。『なんて楽しそうに踊って滑る選手なんだろう』と思いました」

 「4回転ジャンプや、難しいコンビネーションのジャンプは選手にとっては武器。テレビの解説の方が『4回転ルッツを挑戦します』とおっしゃったら、どんな難しいジャンプなんだろうと、ちょっと注目してみてください」

 「ジャンプは『全部降りてほしい』という気持ちで、どの選手も応援しています。4年に一回のオリンピックに、一つ一つのジャンプにスケート人生全てをかけて跳んでいる選手もたくさんいますので、今までの練習やスケート人生がここで報われて欲しい、ここに照準があって欲しいと思ったり、ファンにとってはそういった気持ちもすごく乗ります。私はオリンピックで応援している時が人生で一番緊張する瞬間です。ずっと応援してきた選手に対しては、一層ジャンプを降りて欲しい気持ちが強くて(笑)。もう泣きながら応援したりとかしていますね」

 ―大会期間中はなんというか、感情が忙しくなって大変ですね(笑)

 「本当に大変です。今回は時差もあるから、どうしようって思ってます」

工夫をちりばめながら音楽を表現

GPファイナル、アイスダンスフリー 演技するマディソン・チョック(右)、エバン・ベーツ組=2025年12月6日、IGアリーナ

 ―フィギュアスケートはテレビではジャンプに注目が集まりがちですが、ステップや滑りもすごく魅了されるんですね。

 「そうなんです。それにジャンプもただ跳ぶことだけではなくて、降りた後にどんな工夫をしているのかも大事です。例えば、ジャンプを降りた後に足を高く上げる振り付けをやってみたり、続けてターンをしてみたり。そういう工夫を細かく散りばめながら音楽を表現しているということが評価されます。ジャンプだけでもダメですし、でもやっぱり難しいジャンプも跳べてこそトップ争いができるということもあるので、本当に厳しいスポーツだなって思います」

 ―優雅さも技術に支えられているんですよね。

 「そうですね、例えば、アイスダンスだとジャンプもないので、一見優雅で、楽しそうに余裕たっぷりに踊っているように見えます。でも実は細かな規定があって、ジャッジの方も時間をかけて判断されています。フィギュアスケートって、本当にどのカテゴリーも小さな差が勝負を分けるスポーツです」

 ―男女のシングルが注目されがちですが、アイスダンス、カップル競技も人気があります。アイスダンスもご覧になりますか?

 「アイスダンスも見ます。よりスケートのうまさが引き立つというか…。日本のフィギュアスケートファンの方はシングルの魅力から入って、最終的にアイスダンスの魅力に気づいてしまうみたいなところがあるんじゃないでしょうか。二人の息があったスケーティングを見た瞬間って、本当に息をのむように美しいし、二人にしか出せない世界観を音楽なども使って表現されたりもしています。例えば、マディソン・チョック、エヴァン・ベイツ組(アメリカ)は演技に入る前の、コールされるぐらいからもう世界観を作っています」

 ―以前のインタビューで櫛田育良さんを応援されているとおっしゃっていましたが、いくこう(櫛田育良・島田高志郎組)も楽しみですね。
 
 「まだ結成されて半年くらいですから、1年目でこんなに滑れて、これからどうなってしまうんだろうって、将来が楽しみでしかないお二人だなあと思います。でも、『うたまさ』の演技を見ると、『やっぱり強いな』という気持ちにさせていただいて、オリンピックの舞台をお二人の力で勝ち取られたので、伸び伸びと滑っていただきたいなという気持ちです。きっと日本のアイスダンスもこれから1枠から2枠に増えたり、もしかしたら3枠に増えたりする日が来るのかもしれないと思うと、すごくワクワクします」

全日本選手権 三浦 璃来 木原 龍一 りくりゅう=2025年12月、東京

 「ペアも『りくりゅう』のお二人がこんなに素晴らしい成績を残して、二人の間の信頼感が見ているこっち側にも伝わってきます。ペアもこれからどんどん底上げされていくんだろうなって思うので、カップル競技の方も楽しみです」

春瀬なつみさん略歴

はるせ・なつみ  声優。香川県出身。アニメ「メダリスト」の主人公、結束いのり役などを務める。趣味・特技は、読書・映画鑑賞・音楽鑑賞・フィギュアスケート観戦

前山 千尋

この記事を書いた人

前山 千尋 (まえやま・ちひろ)

デジタルコンテンツ部記者。2007年入社。青森、京都支局を経て、文化部で美術や建築、教育、ジェンダー問題などを担当してきた。山梨県出身。

おすすめ記事

あわせて読みたい

ピックアップ