アイスショー「ファンタジー・オン・アイス2025」が5月31日、千葉市の幕張メッセで開幕した。今季の世界選手権で銀メダルを獲得した女子の坂本花織(シスメックス)や男子の友野一希(第一住建グループ)ら日本の注目選手だけでなく、アイスダンスで新カップルを結成したロランス・フルニエボードリー、ギヨーム・シゼロン組(フランス)、久々の来日演技となったアリーナ・ザギトワとアンナ・シェルバコワ(ともにロシア)の両五輪女王らが出演。俳優・城田優さんの歌声と滑りが、スペシャルコラボナンバーに彩りを加えた。
国内外のトップスケーターによる〝夢の共演〟を詳報する。(共同通信 香月茉里)


オープニング
中田璃士(TOKIOインカラミ)青木祐奈(MFアカデミー)ら出演者が続々と登場。友野と宮原知子さんは息を合わせてバレエジャンプを見せる。坂本は得意なダブルアクセル(2回転半ジャンプ)を跳ぶも、幅が出過ぎて転倒し、苦笑い。「Celebration」に乗せて、ザギトワとシェルバコワの新旧五輪女王がスパイラルを披露した。
第1部
トップバッターはプロスケーターとして活躍の場を広げる元五輪代表の宮原知子さん。映画「バービー」の劇中歌としても知られる「Dance the Night」を滑り、アップテンポの曲で観客の心をつかんだ。演技後には場内アナウンスで「サトコ・バービー・ミヤハラ」と紹介される場面もあった。
2月の冬季アジア大会を制した車俊煥(韓国)は黒い衣装で登場。2024~2025年シーズンのSP使用曲で、低音のビートが特徴的な「Natural」にイーグル、クリムキンイーグルを織り交ぜた。

フルニエボードリー、シゼロン組は白い衣装を身にまとい、城田優さんが歌う「A Million Dreams」(映画The Greatest Showman)に合わせて優雅に舞った。
友野一希と青木祐奈のコラボレーションは男女の恋の駆け引きを表現。EDM調に編曲したショパンの「幻想即興曲」とヴィヴァルディ「四季」より「冬」に合わせ、切ない表情で滑って観客を魅了した。

シェルバコワはこのショーのために新プログラムを用意。ジャズ調の曲「My Tunnels Are Long and Dark These Days」に合わせて高速スピンなどを見せ、大人の雰囲気を漂わせた。
田中刑事さんは城田優さんの「夢の種」とスペシャルコラボ。3回転フリップは安定感抜群だった。

坂本花織はシーズン中の金髪を黒髪にしての出演。エディット・ピアフの名曲「Non, je ne regrette rien」(邦題:水に流して)を披露した。白が基調の衣装でしっとりと舞った。
中田璃士は「Victorious」で世界ジュニア王者らしい、はつらつとした演技。このショーのために作ったという演目でトリプルアクセル(3回転半)などのジャンプを決め、演技後は観客に手を振るサービスも忘れなかった。
前半最後は1970~1980年代のディスコナンバーメドレー。きらびやかな衣装で登場したザギトワが「Conga」に合わせて滑った。その後、1月に2度目の引退をしてプロに再転向した織田信成さんやステファン・ランビエルさん(スイス)らが、名曲「愛のコリーダ」と「September」でエネルギッシュに踊り、観客を盛り上げた。

第2部
ランビエルさんと田中刑事さんがスーツ姿で登場し、ニーナ・シモンの名曲「Feeling Good」に合わせて大人の色気を感じさせるパフォーマンス。
青木祐奈は3月のアイスショー「滑走屋」広島公演で高評価を得たソロプログラム「like you're god」を披露し、続く友野一希も「滑走屋」で滑ったピアノ曲「Halston」の演目で観客を圧倒。ミラノ・コルティナ冬季五輪シーズンのフリーで使用するプログラムで、静かに、そして滑らかに滑った。

フルニエボードリー、シゼロン組の「Metamorphosis 2」に続き、宮原知子さん、坂本花織、車俊煥、中田璃士が映画「NINE」の音楽でコラボナンバーを披露。織田信成さんはピエロの装いで登場し「Send In the Clowns」を演じた。
ランビエルさんはフランス語の曲でプログラムを披露。アップテンポな曲で軽快なステップを刻み、曲調が変わった後は、しっとりとした滑りを披露した。演技を終えるとスイス国旗を手にしたファンがスタンディングオベーション。その様子に驚き、どよめく観客も。
ザギトワはシェルバコワと同じくこのショーのために作った新プログラムを滑った。漢字で「友愛」と書かれたランタンを持って登場。生バンドに合わせて滑り、演技を終えると拍手が起きた。

最後を飾ったのは、城田さんが演出を手がけたミュージカル「ダンス・オブ・ヴァンパイア」の世界。会場が暗転すると、霧が立ちこめ、雷が鳴り響く。ろうそくを持った男たちと、黒と赤の衣装を身にまとったヒロイン役のシェルバコワが登場。舞台上の棺おけから〝吸血鬼〟の城田優さんがマント姿で現れた。さまざまなスケーターが城田さんの歌に合わせて舞い、スケート靴を履いた城田さんも歌いながらリンクを滑走。会場のどよめきを誘った。
グランドフィナーレで会場は大きな拍手に包まれ、2時間半余りのショーが幕を閉じた。
