車いすやストレッチャーでもスケートを楽しんでほしい―。そんな思いを込めた体験イベント「パラスケートフェスタ」(主催:日本パラスケート協会)が26日、東京辰巳アイスアリーナで開催された。フィギュアスケート男子で2002年ソルトレークシティー冬季オリンピック4位入賞の本田武史さんや、2012年ジュニア・グランプリ(GP)ファイナル銅メダリストの須本光希さんらがゲストとして参加。デモンストレーション演技の披露やトークショー、氷上での交流でイベントを盛り上げた。
日本パラスケート協会は、元フィギュアスケート選手で現在は理学療法士として病院に勤務する早川晃太郎さんと、フィギュアスケートファンで車いす生活者の小池幸子さんが共同で代表理事を務めている。旧チェアスケート協会時代を含めて、これまで20回以上も全国各地でイベントを開催してきたという。
今年4月に特定非営利活動法人(NPO法人)化したことを受け、昨秋オープンした東京辰巳アイスアリーナ(江東区)で「千人規模の氷上イベントに挑戦する」とプロジェクトを企画。目標額100万円に設定したクラウドファンディングで約160万円を集め、障害者は無料、その他は参加費500円での開催を実現させた。趣旨に賛同するスケーターの衣装展示も行われ、イベントに参加できなかった澤田亜紀さんや鎌田英嗣さん、佐藤由基さんらも協力した。
パラスケートは障害の有無に関係なく、誰もが同じリンクで一緒に滑って楽しめるスケートの新たな形だ。車いす利用者を中心に、人工呼吸器をつけた人や寝たきりの重度障害の人も参加。日常生活で使用している車いすやストレッチャーでそのまま銀盤に上がり、家族や友人、スケート経験者のボランティアと一緒に氷上を滑走する体験を味わった。スケート経験がない健常者でも、障害者の車いすやストレッチャーを手すり代わりに滑ることができ、主催者は「介助される側が介助をする側になる、逆転現象が起きる。障害の有無に関係なく、自然な役割の入れ替わりが起きる」と奥深さを指摘する。
東京都在住で特別支援学校に通う小学6年生の男児は、今回のイベントで初めてスケートを経験した。人工呼吸器を使用する車いす生活者。母親は「(ボランティア)スタッフが氷上で車いすをクルクルと回してくれたりして(息子は)目を細めて楽しそうにしていた。4人家族みんなで滑れたのも良かった。車いすの人たちにも安心で(普及の)可能性はあると思う」と好印象を口にした。
茨城県つくば市在住の金栗聡さんは、2度目の参加だという。車いすに載せていたのは、株式会社オリィ研究所(吉藤オリィ代表取締役CVO)が開発した分身ロボット「OriHime(オリヒメ)」。遠隔操作で「その場にいる」ようなコミュニケーションを実現するロボットから、女性の声が漏れてきた。三重県に住む近藤真実さんだ。両手と両足が不自由で車いす生活という近藤さんは、OriHimeに搭載された広視野カメラとマイク、スピーカーで、氷上を滑走しているような体験ができたと喜び、こう語った。「(ペアでミラノ冬季オリンピック金メダルの)三浦璃来ちゃんもこんな感じで滑っているのかな、というのをOriHimeで実体験できて良かった」
海外では競技スポーツとしてパラスケートが実施されている国もあり、関係者は将来的なパラリンピック実施競技への採用を期待している。日本国内でも車いすでの滑走を認めてくれるリンクはあるものの、貸し切りの場合に限定されているという。
日本フィギュアスケーティングインストラクター協会の理事長を務める本田武史さんは「(リンクで)風やスピード感を味わってもらい、体験するスポーツとしてみんなにやってほしい」。日本パラスケート協会の小池代表理事は「私たち障害者は健康な方々と触れ合う機会がすごく限られている。こうやってスケートやスポーツを通して触れ合うと、垣根は一気になくなる。是非、健康な方も障害がある方も一緒に滑っていただければ」と普及を願った。












