「メダリスト」の作者つるまいかださんへのインタビュー。2025年1月に始まったアニメ作品では監修者として関わり、幅広い世代に見てもらえるような工夫もしているそうです。連載が続く原作の漫画では、主人公のいのりはこれからどのような成長を遂げていくのでしょうか。インタビューの締めくくりには、フィギュアスケートファンへのメッセージもいただきました。
昨年2~3月に公開したインタビュー【上】【中】【下】を1月21日から1日1回ずつ無料で再公開いたします。この記事は、3回続きの【下】です。
「メダリスト」は…
講談社の月刊青年漫画誌「アフタヌーン」で連載され、アニメ版はテレビ朝日系で2025年1月4日から第1期を放送。第2期が2026年1月24日にスタート。
物語は、「氷の上では別人になる」小学5年生の結束(ゆいつか)いのりが主人公。アイスダンスで全日本選手権に出場経験のある青年・明浦路司(あけうらじ・つかさ)と出会い、才能を見いだされるところから始まる。
中学生でフィギュアスケートを始めた司は、不遇な環境でスケートを続けて挫折。スケートを始めるのは小学生でも遅いと言われる世界だが、そんな「常識」を覆し、2人は共にオリンピックの金メダリストを目指して挑んでいく…。
漫画よりアニメを好きと言ってもらえたら
ー今年1月、つるまいかださんが漫画家になった時からの「夢だった」というアニメ化が実現。新たなファンからも支持され、人気を呼んでいる。アニメ製作の過程では自ら監修者として関わってきた。
「できあがった動画を見た時はやっぱりすごく感動しました。アニメって、一枚一枚の絵が全部手書きで、それで一つの場面ができるんです。もちろん最近はCGなどの技術も発達しましたが、本質的にはどこかの誰かが一生懸命描いてくれてることには変わりはない。日本ではない、遠くの国の誰かが書いた一枚だったり。それが何度も積み重なり、一つの作品が完成するんです。そこに感動的なものがありました」
ー漫画版は「月刊アフタヌーン」で連載中。大人向けの青年誌だが、アニメ版では幅広い世代が見ることを想定し、工夫もしている。
「アニメ版ではどんな年代の人でも見てもらえる内容にしたいと思っていました。製作の皆さんは私がお伝えしたことを真剣に受け止めてくださっていると感じます。具体的には、司といのりの関係性を大切に描いているので、アニメでもその関係を崩さないようにしてほしいとお願いしました」
ーアニメ製作陣には、作品を見ることで想像されるストレスにも気を配ってもらっている。物語の最初の方では、いのりの母親が、なかなかいのりがスケートをすることに賛成せず、どうすることもできないいのりが苦しむ場面もある。
「大人向けの漫画版ではお母さんの性格がきついところがあって。大人の読者であれば、そういったキャラクターに耐えられますが、小学生や中学生からすると、ああいう怖いお母さんはいやだと感じてしまうかもしれない。逆に母親の目線に立つと、小さな子が苦しい思いをするのは見ていられない、と思う可能性もあります。物語の軸がずれないようにした上で、脚本に柔らかさを出していただいています」
「アニメ制作スタッフの皆様に対しては、『メダリスト』という大きな船に一緒に乗ってくれている乗組員のような気持ちです。今はアニメを見た方々が『漫画よりもアニメが好き』と言ってくれるようになるとうれしいです」
主人公と読者が一緒に旅する気持ちで
ーつるまいかださんは、「メダリスト」がデビュー作。夢に邁進するいのりの姿は、つるまいかださん自身にも重なってみえる。
「そういうところはあるかもしれません。やっぱりいのりは私の中を大きく占めていた変わりたいという気持ちに肉付けして作ったキャラクター。私自身のそのものの考え方にとても近いキャラクターだなって思ってます。司の方は、大人として子供を守りたい気持ちに、自分なりの理想像を考えながら作っています。」
ー「月刊アフタヌーン」で進む漫画の物語で、いのりは中学生となり、クラスもノービスからジュニアに。11巻ではタイ・バンコクで行われたジュニアグランプリシリーズに出場し、初の海外試合にも挑んでいる。
「タイはたとえばご飯が安くて、旅行しやすいイメージもあると思うのですが、フィギュアスケートにかかるお金はとても高い。本当に、日本よりさらに一握りの人しかできないスポーツで。そもそも暑いので、やっぱり寒い環境にするっていうのが、すごく難しい」
「ただ、タイのスケートリンクにお邪魔したら、その中で広がっていた世界は、ここは日本かと錯覚したくらいでした。日本での取材先と同じように、寒い中、全員が真面目にコツコツ真剣に練習していて。練習環境や練習姿勢に、国の違い・国民性の違いは感じませんでした。まだタイしか行ってないので世界中が同じです、とは言えないんですが、そのように感じました」
ーオリンピックの金メダルを目指すいのりはこれから、どんな成長を遂げていくのだろうか。
「勝負の世界にはまだまだたくさんのテーマがあります。いろいろな面から『勝負』というものを見つめるととどんな障壁があるのだろうか、と。そしてその壁の乗り越え方を描けたらと思っています」
「ただ、いのりがフィギュアスケートで上を目指せば目指すほど、物語は私たちの日常からどんどん切り離されてしまう。そうすると読者が感情移入することが難しくなってしまうかもしれない。それは描く上での課題ですね。読者の方たちが、いのりや司たちと一緒に旅をするような気持ちになって、非日常の世界についてきてくれるだろうか。こう問いかけながら、2人が愛されるキャラクターになるよう成長させていきたいです」
競技もキャラクターも大切に描きたい
ーいのりがどんなスケーターになっていくのか、物語から目が離せない。インタビューの最後に、フィギュアスケートファンへのメッセージをもらった。
「フィギュアスケートというスポーツに対して、ネガティブな印象を与えないように、ルールを間違わないように、発信していきたいです。私は、多くのファンの皆さんが愛しているスポーツを、漫画の題材としてお借りしている立場だと思っています。ですから、詳しい方には厳しく見ていただけたら嬉しいですし、気づいたことがあったらご指摘いただきたいです」
「『お借りしている』と自認している以上、漫画の中で何を描いても良いということではなくなり、表現が『不自由』になる面もあるかもしれません。私にはまだ子どもの部分もあるのですが、大人になるほど、守らないといけないものって、どんどん増えてきますよね。フィギュアスケートもその一つとして大事にしていきたいと思っています。表現する上で、これは心地が良い縛りと捉えています」
「いのりと司は、たくさんの人が愛してくださっているキャラクター。演じてくださる声優さんのものでもあると思っているし、フィギュアスケートと同様に、私がもう作品の中で好きに扱って良いキャラクターではないと思ってます。この2人がとにかく魅力的でいるってことを、敬意を持って私が守らないといけないって思っています。もう(漫画家という枠を飛び越えて)プロデューサーとして、良いカットを撮るぞっ、みたいな気持ちで頑張りたいです」
=【完】=
Profile
つるまいかだ
漫画家。愛知県出身。『鳴きヤミ』で即日新人賞「in COMITIA123」優秀賞を受賞。本作『メダリスト』でデビュー。










