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2026.01.27

宮原知子さん、ダンサーの小㞍健太さんとトーク フィギュアスケートにとってダンスとは?

横浜赤レンガ倉庫「アートリンク」に登壇した宮原知子さん=2026年1月、横浜市

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 プロフィギュアスケーターの宮原知子さんが横浜・赤レンガ倉庫の屋外スケートリンク「アートリンク」で、フィギュアスケートの日本代表選手の表現指導や振り付けを行っているダンサー、小㞍健太さんとフィギュアスケートとダンスの表現について語り合った。

 選手時代の強化合宿で小㞍さんのレッスンを受けていたという宮原さんは「自分の中から発想していくというインスピレーションをすごく受けた」と振り返った。 

屋外リンクでスケート教室

スケート教室で子どもの指導をするプロフィギュアスケーターの宮原知子さん=2026年1月、横浜市

 トークに先立って、アイスリンクでは小中学生を対象にしたフィギュアスケート教室が開かれ、小中学生約20人が参加した。転んだり、起き上がったりする練習からスタートし、宮原さんは「もっとやってみますか?」などと声をかけ、途中からはジャンプの練習なども指導した。子どもたちは時折歓声を上げながら、楽しそうに滑っていた。さらにスケート教室後、宮原さんが短い演技を披露し、観客からは拍手がわき上がった。
 
 終了後、宮原さんは「子どもたちがすごく楽しく滑ってくれているのを見ただけで、私もうれしくなりましたし、最初はみんな恐る恐るだったんですけど、最後はスーッと滑っていたので良かったなと思います」と話した。

強化合宿で表現レッスン

スケート教室で演技を披露するプロフィギュアスケーターの宮原知子さん=2026年1月、横浜市

 スケート教室の後に、参加した子どもたちや親を対象に、司会者を交えた3人でトークイベントを行った。

 ―お二人は結構長いお付き合いでいらっしゃるんですよね?

 小㞍「もう10年くらいですね」

 ―出会いのきっかけは何かあったんでしょうか?

 宮原「フィギュアスケートで強化合宿というものがありまして、国際大会に出る選手が集まる合宿があるんです。そこで表現レッスンという講習科目があって、毎年いろんな先生が来てくださるんですが、ある年に小㞍さんが来られて、それが一番最初の出会いでした」

 ―第一印象はいかがでしたか?

 宮原「今まで来て講習してくださった先生方にはない類のレッスンをしてくださって、本当に面白いなっていうのが第一印象でした」

 ―例えば今までになかったレッスンというのはどんなことがあったんでしょうか?

 宮原「それまではタンゴとかバレエといった形で、決まったダンスの枠の中、ジャンルの技術を習うみたいなことが多かったんですけど、健太さんのレッスンは、『関節がボールになったみたいに動いて』とか、『風に揺られてみて』とか、そういう内容でした。当時私はまだ中学生くらいだったと思うんですけど、戸惑いつつも、本当に心の中ではめちゃくちゃ楽しんでました」

 ―楽しいレッスンだったんですね。

 宮原「 本当に楽しくて。自分の体にないもの、ない要素を表現しないといけないというところで、戸惑いは多かったんですけど楽しかったです」

 ―と、宮原さんはおっしゃっていますが、小㞍さんはいかがでしたか?

 小㞍「ダンスを通して表現を学んでいくということで、まず楽しい、やってみたいと思ってもらせることが重要なんじゃないかと思っていました。僕も初めてだったんで、すごい緊張していたんです」

 「でも、それをどういうふうにほぐして、選手のみんなとコミュニケーションを取れるのかなと思ったときに、やっぱり選手が食いつくような、今までに聞いたことがないような表現、例えば、ボールが体の中に入っていて、それを体の隅々に送ってみる、ボールを転がしてみるということをやってみようと。それをすることで、知らない間にいろんな動きをしていて、選手が一瞬でも面白いと思えるものを、と考えていました」

 「選手(の様子)を見ながら、各々の個性と、各々の技術はバラバラではあるのですが、みんなが氷上でどういうふうにできるのかなっていうことを考えてくれて、すごい楽しかったです」

 ―当時の宮原さんは、いかがでしたでしょうか?

 小㞍「とてもシャイで、毎回新しいプログラムをみんな用意してきているんですが、ある年に知子ちゃんが『私、今年はコンテンポラリーなんです』って報告してくれて、すごいうれしかったです。こういうことやってみたいっていうのがどんどん具体的になっていきました。年を重ねるごとに、もっと手先をこうしてみたいとか、目線を使うにはどうしたらいいかってどんどん(やりたいことが)明確になっていく姿を見ていて、僕もうれしくなって、どんどんアドバイスをしていました」

 ―そうなんですね。宮原さんの表現力というのは、小㞍先生の教えと言っても、過言ではないのでしょうか。

 宮原「本当にそうで、もちろん言葉のアドバイスもありますけど、実際のレッスンでの動きや、自分自身の動き方を見る中で、スケートは与えられた振り付けをするということが多いと思うので、自分の中から発想していくというインスピレーションをすごく受けていました」

 ―フィギュアスケートって、やっぱり見てる私たちにとっても、特に競技となると、ジャンプの高さだったりとか、あと回転数で点数が付けられるということが、特に選手の頃はそういうことがあったかと思います。宮原さんは引退してからも表現力を身につけたいっておっしゃっています。そういった表現力に関連して、宮原さんにとって、コンテンポラリーを含めたダンスっていうのは、どういう存在でしょうか?

 宮原「どうしてもスケートの中には技術面があって、ジャンプとかスピンをきっちりこなさなければいけないという要素があるので、どうしてもそちらに集中してしまって、音楽は鳴っているけれど、自分が体を動かしているだけというふうになってしまうと見ている方が面白くないのかなって思います」

 「やっぱり滑っている側が、表現をする時に、テーマを持って、気持ちを伝えたいという意志を持って動くことで、何かしら見ている人に伝わるものがあると思っていて。特にシニアの最後の方は大事だなと思っていました。試合じゃなくなるとジャンプだけじゃなくて、表現が大事になってくるので、もっと見てて面白いと思ってもらえるスケーターになりたいなって思っていました」 

フィギュアスケートの振り付けで気をつけていること

宮原知子さんとのトークイベントで話すダンサー、振付家の小㞍健太さん=2026年1月、横浜市

 ―宮原さんのパフォーマンスは、涙が出てくるほどうっとりしちゃう、すばらしい表現力をお持ちだと思うんですけれども、小㞍先生がフィギュアスケートの振り付けをされている中で、一番気をつけているところはどんなところでしょうか?

 小㞍「まず音楽と共鳴するというところ。あと、僕はダンスなのでスタジオで踊りますが、そのスタジオで動いたことを、知子ちゃんが氷上でやってみるということをすごく心掛けていました。こういう表現なら氷上でもできるかなと思って、僕が作っても面白くないので、あえて陸の動きを氷上でやってもらう、割とコラボレーションになっているんですけど、それはすごく心がけています」

 「あと音楽性ですね。お客さんとパフォーマーが一番つながるのはダンスもそうですが、フィギュアスケートも音楽や、呼吸感というものがすごくダイレクトに伝わるので音楽性を感じる動きっていうのは大事だと思います」

 ―フィギュアだけではなくて、ダンスもいろんなジャンルで皆さんやられていると思うんですけれども、アドバイスみたいなの、小㞍先生からありますね?

 小㞍「ダンス全般というか、舞台芸術全般で言うと、いろんな音楽を聴いて体を動かすということはやってもらいたいです。劇場に足を運んでミュージカルであったり、芝居であったり、もちろんバレエ、ダンスというものを生で観てもらいたい。結構アルゼンチンタンゴなんかは情熱的ですし、体全身で感じられます。いろんなジャンルのものを劇場で見るということは、僕の子供のころに連れて行ってもらっていたので、一つっていうよりは、いろいろ観るっていうのは楽しいし、世界が広がる気がします」

 ―そうですね。ぜひ、小㞍先生が出演する舞台なんかも、見ていただければと思います。宮原さんも、小㞍さんの舞台、結構観に行かれてるんですよね。 いかがですか?

 宮原「私自身も小さい時から、いろんな舞台を観に行く機会があって、すごく好きで、健太さんのは予定が合えば絶対に行くっていうくらい大好きです」

 ―健太さんの舞台を見られて、またそのフィギュアに生かすというところは、やはり宮原さんの中で大きいのでしょうか?

 宮原「あの動きなら氷の上でできそうかなとか、そう思いながら見ている自分もいます」

 ―やはりフィギュアとダンスのつながりはかなり深いものなんでしょうかね。

 宮原「スポーツとはいえ、踊る要素もあるので、関係は深めていくべきだと私は思っています」

 ―フィギュアと、これからダンスと、これから何かお二人で、こんなことしてみたいね、なんていう展望?構想?などはありますでしょうか?

 小㞍「僕もここの赤レンガで振付家として活動しながら、ダンスとスポーツ、アスリートとアーティストが出会う場を実現していきたいと考えていました。今後二人でこの赤レンガのアートリンクで何か企画できたらと思います。一緒に作って、ここで発表することもすてきです」

 ―宮原さんはどうお考えですか?

 宮原「そんな機会があったら喜んでいつでもスケート靴を持って来ます。特にこの屋外リンクは、今は少なくなっているので、そういう機会に私も外の空気を吸いながら滑れるということがすごく楽しいです」

 ―そうなんですよね。アートリンクは今年は漫画ですが、背景にアートが描かれていて、毎年違ったアートが楽しめます。そういった中で、フィギュアスケートをするというのが楽しいですよね。

 宮原「いろいろな場面というか、いろんなところからいろんなインスピレーションを受けられるので、面白いです」

 ―新たな企画を楽しみにしています。最後にですね、今日お集まりいただいた皆さんに向けて、またスケート教室に参加してくれたみなさんに向けて一言ずつアドバイスなんかをいただけますか? 宮原先生、まずはいかがでしょうか。

 宮原「今日はお集まりいただきまして、 ありがとうございました。本当に短い時間だったんですけど、 少しでも氷と触れ合う楽しさを味わってもらえたかなと思います。全然堅苦しいスポーツじゃないので、気軽に滑ってみたいなと思ったら、スケートしに来てください。また、何かのコラボレーションで私もここに来ることができたらなと思っているので、引き続きよろしくお願いします」

 ―小㞍さんはいかがでしたでしょうか。

 小㞍「今度はダンスのワークショップをしながら、宮原さんに参加していただいて、一緒に踊った後に滑ってみるとか、できたらいいなと思います。またよろしくお願いします。今日はありがとうございました」

プロフィギュアスケーターの宮原知子さん(左)とダンサーで振付家の小㞍健太さん

小㞍健太さん略歴

ダンサー・振付家。3歳よりクラシックバレエを始める。1999年ローザンヌ国際コンクールにてプロフェッショナル・スカラーシップ賞受賞をきっかけに渡欧。モナコ公国モンテカルロバレエ団を経て、世界的な振付家イリ・キリアン率いるネザーランド・ダンス・シアター(NDT1)に日本人男性として初めて入団。2010年よりフリーランスとなり、国内外で活動している。オペラやミュージカルの振り付け、フィギュアスケート日本代表選手の表現指導、振り付けなど、活動は多岐にわたる。

前山 千尋

この記事を書いた人

前山 千尋 (まえやま・ちひろ)

デジタルコンテンツ部記者。2007年入社。青森、京都支局を経て、文化部で美術や建築、教育、ジェンダー問題などを担当してきた。山梨県出身。

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