フリー当日。SPで約9点リードしても、坂本は緊張に押しつぶされそうだった。昼の公式練習はジャンプが決まらず、中野コーチと言い合いに。いらだつ様子で涙を流しながら会場を離れた。それでも世界女王は勝負強かった。もがいた先につかんだ3連覇。「何としてもやり遂げたかった。すごくほっとしている」と歓喜の夜を迎えた。
友人との談笑や散歩で気分転換し、無心で臨んだ最終滑走。ダイナミックな2回転半で幕を開け、次々とジャンプを決める。演技後半は2連続3回転、2回転半―3回転―2回転の3連続ジャンプを成功。技術点、演技点とも1位と他を圧倒した。非公認ながら自身の今季世界最高得点を上回り、腕を振り下ろして喜びを爆発させた。
苦悩と闘ってきた。初制覇した今月のGPファイナル後には「何でトリプルアクセルも4回転もないのに世界女王やねん、って言われることもあるけど、それは自分が一番分かっている」と吐露。葛藤の末に「大技を見たければ花織を見なくていい」と割り切った。
大会の前週に体調を崩しても「言い訳は通用しない」と逃げ道を断ち、若手の台頭も「上がってこさせまい」と意地を示した。「見せ方を追求し、結果となって表れた。それが今シーズンの強み」。女子56年ぶりの世界選手権3連覇へ、さらに自信を深めた。(大島)