連載

2025.12.10

夢がかなった先に見えたパリでのファッションショー デザイナーの考えが尊重される海外選手からの依頼 伊藤聡美さんに聞く(下)

浅田真央さんのアイスショー『BEYOND』のプログラム『シェヘラザード』の衣装のデザイン画 ⓒSatomi ito

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 10年以上にわたってフィギュアスケートの衣装を手がける中で、さまざまな挑戦を続け、表現の幅を広げてきた伊藤聡美さん。最近では力士の着物を手がけたほか、一点物へのこだわりを突き詰め、2026年にパリで開かれるファッションショーにも参加するという。

 フィギュアスケート文化に貢献したいと、フィギュアスケートの衣装制作の初心者向けにオンラインサロンを開き、指導もしてきた。他方で、日本ではフィギュアスケート衣装デザイナーの地位がまだ高いとはいえないといい、衣装の決定、受注と発注の関係に疑問を投げかける。(インタビュー=前山千尋、品川絵里)

デザイナーの役目、イメージを超えるデザイン

2024-2025のイリア・マリニン選手のフリーの『I'm not a vampire』の衣装 ⓒSatomi ito

 ―今年のISU(国際スケート連盟)のフィギュアスケートアワードでノミネートされたマリニン選手のフリーの『I'm not a vampire』の衣装は、耽美的で、美しすぎて怖いみたいなところがあるのかなと感じました。それが伊藤さんの持ち味なのかとも思うのですが、そういう意味で伊藤さんの魅力が伝わって評価されているのではないでしょうか。どうやって作られたんですか?

 「ヴァンパイアは2着作ったんです。血のりが付いてるシャツと、もう1つ黒いスーツのようなものを作りました。どっちも自由にデザインさせてもらって、マリニン選手が『どっちもいいので、どっちも作る』ということでした。その時、ちょうどご本人がアイスショーで来日していたので、そのタイミングで合わせてフィッティングもさせてもらえました。シャツをフィッティングした時に『血をここにつけたいんだ』っておっしゃって。本人のリクエストもあって血のりをつけました。マリニン選手には基本はまかせてもらって、細かい部分で好みを反映させていくような感じでしょうか」

 「今シーズンはショートとフリーをどちらもやらせてもらっています。どっちも気に入ってくれていると感じています」

2025年11月のスケートカナダ男子SPのイリア・マリニン選手。伊藤聡美さんが衣装を手がけた=サスカトゥーン(共同)

 ―マリニン選手は伊藤さんから見るとどんなイメージの方だから、こうデザインするっていうのはありますか?

前山 千尋

この記事を書いた人

前山 千尋 (まえやま・ちひろ)

デジタルコンテンツ部記者。2007年入社。青森、京都支局を経て、文化部で美術や建築、教育、ジェンダー問題などを担当してきた。山梨県出身。

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