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2026.05.24

フィギュアスケートを映像以外で記録する 著作権が阻む映像へのアクセスの難しさ 【金沢21世紀美術館トーク②】

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 フィギュアスケートの芸術性について研究するスポーツ科学研究者で、国学院大学准教授の町田樹さんが3月、金沢21世紀美術館(金沢市)で行われたトークセッションに登場した。

 この日のトークのテーマは、「フィギュアスケートを「芸術作品」として捉え、どのように残し、未来に伝えていけるのか―。この日は、作品を保存、活用していくためのアーカイブについて、町田さんが考えたワークショップも実施。その後、美術館のアシスタント・コンサヴァターの梅谷彩香さんとトークを展開した。

 町田さんは、およそ100年前に上演された『牧神の午後』を例に出し、作品を残すために必要な情報として作者や演じ手の意図だけではなく、鑑賞者の反応も重要だと指摘した。アーカイブには映像が欠かせないが、現在ほとんどの映像は放送局が映像の権利を持っている。アクセスが難しいため、町田さんは映像を使わずにフィギュアスケートを記録する取り組みについても明かした。

ワークショップはこんな内容

 【創作】町田さんと、ダンサーの義本佳生(けい)さんがそれぞれ1分程度のパフォーマンスを曲選びから振り付けまで作り、それを披露。町田さんは「待つ心」というテーマをクラシックバレエで、義本さんはカナリアをコンテンポラリーダンスで表現した。

 【記録】町田さんと義本佳さんは参加者の前で順番にパフォーマンスをし、一人が踊っている間はもう一人は楽屋で待ち、お互いにパフォーマンスの内容を全く知らない状態をつくる。参加者はAグループとBグループに分かれ、動画やインタビューでダンスを記録する。

 【再現】Aグループは町田さんのダンスを義本さんに、Bグループは義本さんのダンスを町田さんに伝える。参加者から提供された記録を頼りに、町田さんは義本さんのパフォーマンスを、義本さんは町田さんのパフォーマンスを再現する。

  第三者(参加者)による記録や伝達を通じて、パフォーマンス作品の再演を目指した。

体の動きを記録すれば、作品をアーカイブしたことになるのか

梅谷

梅谷

 「今回、美術館でフィギュアスケートの話をすることについて、何でだろうと思われた方も多いかなと思います。一番の根幹となる活動の一つとして、美術館はやはり、展示をしたり、イベントを開催したり。皆さんにさまざまな芸術活動を見ていただいたり、学びの場として開かれているというところが一つあります」

 「現在起こっている最先端の芸術表現、そういった作品を収集して、コレクションしてそれを保存し、未来へ伝えていく。そういったところも美術館の重要な活動です。今回、そういった美術館という場所で、フィギュアスケートを作品として考えるというのは、どういうことなのかなというのを考えようと企画しました。そもそもフィギュアスケートをアーカイブするとなると、どういった記録をアーカイブすることになるのでしょうか」

ワークショップで撮影した映像を確認する参加者=2026年3月28日、金沢市

 「先ほど行ったワークショップを手がかりにそのことについて考えていきたいと思います。まず一つの問題は、冒頭、作品としてのフィギュアスケートというキーワードが出ましたけれども、私は、それは創作物の単位だとお話しました。そもそも『作品とは何か』というところから考えていかなきゃいけないんじゃないかなと思います」

町田

町田

 「ワークショップ参加者は、基本的に私やダンサーの吉本さんが作った作品をアーカイブしようと頑張ってくれました。まず身体運動をアーカイブする時に最初に思いつくのは、映像を撮影することですよね。そうすることによって体の動きを記録することができます。しかしながら体の動きさえ記録すれば、作品をアーカイブしたことになるのかというと、一概にそうとは言えないわけです」

前山 千尋

この記事を書いた人

前山 千尋 (まえやま・ちひろ)

デジタルコンテンツ部記者。2007年入社。青森、京都支局を経て、文化部で美術や建築、教育、ジェンダー問題などを担当してきた。山梨県出身。

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