スポーツウェアでありながら、プログラムの芸術的な世界観を伝える上で欠かせない要素であるフィギュアスケートの衣装。これまで浅田真央さんや羽生結弦さん、宇野昌磨さんなど、トップスケーターの衣装を手がけてきたフィギュアスケート衣装デザイナーの伊藤聡美さんは手本とするデザイナーがいない中で、自らの表現を切り開いてきた。
スケーターからのオファーが絶えない、日本を代表する衣装デザイナーの伊藤さんに、その耽美な衣装が生まれるまでの苦労や面白さ、またデザイナーの立場から見たフィギュアスケート界の課題について聞いた。3回連載でお届けします。(インタビュー=前山千尋、品川絵里)
勇気づけられた『鐘』
―元々はフィギュアスケートのデザイナーになろうとは思っていなかったとお聞きしました。
「そうですね。服飾の専門学校に行っていた時、当時神戸で開かれていたファッションコンテストがありました。デザイナーの登竜門のようなコンテストだったんですが、そこで受賞して、副賞にイギリスの芸術大学に学費無償で留学したんです。それが海外に行くきっかけになりました」
「オートクチュールがすごい好きで、流行の服を作るというより、こんな衣装、どこで着るんだろう(笑)、みたいな服を発表しているようなデザイナーさんたちにあこがれていました」
「自分の感情や、表現したいものを服に乗せるというイメージを持っていました。当時はフィギュアスケートは全く視野に入ってなかったんですが、一点物を作るという部分は、今となっては当時思っていたことと近いことをやっているなと感じています」
―留学中に浅田真央さんの演技に感動されたことがきっかけと聞きました。
「高校生ぐらいからフィギュアスケートを見始めて、服飾専門学校の学生時代も本当に好きでした。もう浅田真央さんの大ファンで、学校の授業が終わったらそのまま大会を見に行くみたいな感じで。学校でもちょっとやばいフィギュアファンがいるぞって、有名だったと思います(笑)」
「でも、その時は全くスケートの衣装を作りたいとは思ってなかったんです。イギリス留学中にいろいろとうまくいかないことがあって、これからの進路をどうしようかなって悩んでいる時に、浅田さんの演技に励まされていたので、こんなに真央さんのことが好きなら、浅田さんのデザイナーになるって決めました。そこでようやく初めてフィギュアの衣装デザイナーになろうと決心したんです」
―プログラムは何が好きですか?
「『鐘』が、本当に一番好きですね。ラフマニノフの音楽もすごく良いです。やっぱり今も『鐘』を見ると、当時の自分の気持ちも思い出したり、勇気づけられたりしたことも思い出したりします」
―奮い立たせられるような、曲もすごくかっこ良いし、力強いですよね。
「女子選手でこの音楽を選ぶのもすごいですし、チャレンジャーなんだな、戦いに行ってるなっていう風に私には見えたので、自分もやるぜ、みたいな感じで影響を受けました」
―そもそもフィギュアスケートはどんなところに魅力を感じていたんですか?
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