フィギュアスケートの衣装を数多く手がけてきたデザイナーの伊藤聡美さんと、写真家の矢口亨さんが手がけた羽生結弦さんの『Couture on Ice(クチュール・オン・アイス) 羽生結弦×伊藤聡美 写真集』。競技やアイスショーとは異なり、通常のフィギュアスケートのプログラムづくりでは最終段階で検討される「衣装」から始めるという発想で生まれました。どのように構想され、3人はそれぞれの表現を重ねていったのか。伊藤さんと矢口さんに、制作の舞台裏を聞きました。
「衣装」から始めたい
―2年ぐらい前から、この企画が進んでいたと聞きました。タイトルに「クチュール」という単語が入っていますが、きっかけとしては、競技ではなくて作品として、羽生さんに着ていただきたいということがあったんでしょうか。
伊藤「そうですね。どうしてもフィギュアスケートって、衣装制作がプログラムづくりの最後になってしまうので、その順番をまずひっくり返したくて。衣装から始まって、羽生さんがそこからインスピレーションを得て、滑ってくれたらいいなというところがありました。それをちゃんと氷上で撮影して、作品集にしたいって思ったんです」
―矢口さんはどういう経緯で関わることになったんですか。
伊藤「企画が進む中で、カメラマンさんをどなたにお願いしようかと、考え始めた時に、編集の方から、あえてフィギュアを撮ったことのない人がいいんじゃないか、という提案もあったんです。でも氷の上で撮るし、やっぱりあのスピードに慣れてる方じゃないとちょっと難しいんじゃないかなって、私は思って。それに加えて、以前『MUSE ON ICE』という作品集を出したときに、ネットなんかで選手の写真を見ていた時に、『いいな』と思う写真のほとんどが矢口さんだったんですね。それで、『MUSE ON ICE』で矢口さんの写真をたくさん使わせていただいたご縁もあって、矢口さんにお願いしたいと私から、編集の方にお願いして参加してもらうことになりました」
―もともとお付き合いがあったっていう感じでもないんですかね。
伊藤「ない…ですよね?」
矢口「多分、お会いしたのは一度ぐらいだったと思います。『MUSE ON ICE』の写真選定の際に、私の前職の会社に来ていただいて、そこで初めてお会いさせていただいて」
―「いいな」って思う写真が、全部矢口さんだったっていうのは、どういうところが魅力だったんでしょうか。
伊藤「『MUSE ON ICE』は羽生さんだけでなく、いろんなスケーターさんの写真も載っているんですけど、選手に対してのリスペクトが見えたり、本人の前で言うと恥ずかしいですけど、『愛を感じるな』って思っていて。本当にどの写真も、よくこんなシーン撮れたな、と思う写真が多くて。なんか、いいなって思ったんです(笑)」
被写体への愛
―今、愛を感じるというふうにお話が出たんですけど、矢口さんは愛を表現されているんですか。
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