連載

2026.09.22

日本人6人が海外でショースケーターを続ける理由 自炊が息抜き、英語の壁や寝付けない夜も

デザイン:山田紗英子

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 イギリス・ブラックプールの「プレジャー・ビーチ・リゾート」で毎年夏に開催されるアイスショー『HOT ICE』。1936年に誕生し、今年で90年を迎える歴史あるショーです。今年は総勢30人ほどのメンバーのうち、今年競技生活を引退した江川マリアさんら6人の日本出身スケーターが出演。ハードなリハーサルに、緊張感あふれる本番、英語の壁―。

 慣れない海外生活の中で、それでも観客の笑顔に後押しされ、ショーに臨んでいます。

 まさに「好き」を仕事にしている、石塚玲雄さん、江川さん、梶本将太さん、杉原舞香さん、鈴木愛理さん、依田茉里紗さん。6人の座談会の2回目をお届けします!

ルームメイトとたわいのない会話が楽しい

     ―ショーのことでもイギリスでの生活でも、大変なことと楽しいこと、来てよかったと思うことを教えてください。

石塚

石塚

 大変なことは、イギリスのご飯あまり合わなくて(笑)...今はみんな自炊を各家でしているんですけど、頑張って食材を買って、なるべく日本食をみんなで作って食べたりしています。海外に来て思うのは、日本食って、レパートリーもたくさんあるし、本当に美味しいんだなって、実感する日々です。

 みんな感じていると思うんですけど、やっぱり日本食がいつでもどこでも食べられないっていうのは結構大変なことで。でも大変ではありますが、楽しいことで言ったらやっぱりいろんな文化を持ったいろんな国の人と話すことができたり、みんなで集まってパーティーしたり、本当にたわいもない会話をルームメイトの人と一緒にしたりとか、そういうことをしているときは、日本にいるとなかなかできないことなので楽しいし、英語も学べますし、すごくいい機会だなと思います。

     ―今日のメンバーとかでよくご飯を食べますか?

石塚

石塚

 この日本人6人はこの前も日本食を食べに行ったりとか、何回か集まってみんなで話したりとかしています。

座談会に参加したメンバー。日本食を囲む(江川さん提供)

     ―ルームメイトがいらっしゃるとのことでしたが、どこの国出身の方なんですか?

石塚

石塚

 ルームメイトは2人いて、1人はアメリカ人で、もう1人はカナダの人です。2人は落ち着いた性格をしているので、気が合うというか、お互いゆったりと過ごすことができていて、すごいいい感じです。

     ―梶本さんはどうですか?

 大変なことは、まず初めての一人暮らしなので、実家にいた時は洗濯や食器洗い、料理も全然したことなかったので、それが大変でしたね。リフレッシュする場所があんまりないのが、こっちに来てしんどいことかなと思います。でもショーが終わった後に料理を作っている時間が、ちょっと自分のリラックスになったり、スケート以外のことを考えられたりする時間になっています。

梶本

梶本

『ホットアイス』が行われているイギリス・ブラックプールの町並み(江川さん提供)

この道を選んで良かった

     ―杉原さんはどうですか?

杉原

杉原

 現役の時から毎日スケートをしていたんですが、今みたいに毎日緊張感を持って本番としてやることが大変だなって私は思っています。気持ちが高ぶっちゃって、疲れているのに夜寝れなくて、3時、4時くらいまで起きていることも結構あって、それが大変なところです。

 この道を選んでよかったなと思ったことは、小さい頃からやってきた好きなスケートを仕事にできているということと、ホットアイスはすごく近くにお客さんがいるので、お客さんの反応を直接見て、笑顔で見てくださっていたりとか、拍手や歓声を聞いて、自分も楽しいし、お客さんも楽しんでいることが体感できるので、その時はやっぱりやっていて良かったなと思います。オープニングの日はお客さんもたくさん入っていて、ショーの道を選んでよかったなと思いました。

自炊でつくった食事(江川さん提供)
鈴木

鈴木

 今は毎日スケートで1日休みっていう環境です。船ではもともとある振り付けを覚えるんですが、でもこちらでは一からつくって、振りも変わることがあります。リハーサルの進め方も違って、それが大変だったことです。

 船ってご飯があるので、自炊はしないんですが、ここは毎日自分たちで作るんです。それが逆に私にとっては息抜きで、(ルームメイトの)マリアちゃんと一緒に『今日何食べる?』って言いながら帰ってきて、練習で疲れて、ショーで疲れて。ちょっと一杯飲みながら、会話して料理を作るのが息抜きです。

 これまで自炊もあまりしたことがなかったんですけど、ここに来てから毎日のようにして、自分の力になっているなと思って。それは良かったことです。

 私も1年目は、自炊にすごく苦労して、ちょっとやっぱり好き嫌いもあって大変だったので、2年目からは日本から醤油とか、みりんとか調味料や、お米も持ってきて、ちょっとでも楽できるようにしています。

 リハーサルでも休憩が靴を脱いでからまた履くまでに、1時間しかなくて、実質45分くらいで、その中でも早くお昼ごはんを食べなきゃいけなかったりするので、そういう時に簡単にできる照り焼きのタレを持ってきたり。

 今はもうだいぶ慣れてきて。杉原ちゃんとルームメイトなので、2人で一緒に『どうする?今日は』って話したり。1、2年目は海外の選手とルームメイトだったので全く食べるものも違かったんですが、今は2人で話してできるので、すごく楽しいなって思っています。

依田

依田

     ―みんな、身近な生活の中で楽しみを見つけているんですね。

依田

依田

 ショーももちろんフィナーレとか、楽しいんですけど、やっぱりこう、別っていうか。違う楽しさがあります。

メンバーが生活している寮のキッチン(江川さん提供)

きつくても乗り越えられる

     ―江川さんは大変なことや楽しいことってありましたか?

 大変だったことはいっぱいあるんですけど、一番に挙げるとすると、やっぱり私は英語かなと思いますね。今も本当に上達していなくて、『Thank you』と『Hello』ばっかり言っているんですけど...

 会話ができる、できないは置いておいても、例えば振付師や、プロデューサーの方からの指示もほとんど聞き取れなかったり、よく茉里紗ちゃんとか玲雄くんとか愛理ちゃんに助けてもらって、なんとか乗り越えられたっていうのがすごく大きいので、苦労というか、今から一番頑張らないといけないなって、思っています。

 良かったことは、現役時代もちょっとバイトはしていたんですけど、現役引退して、一旦ほぼフリーターみたいな生活を送っていて、やっぱり好きなことを仕事にするって本当に素敵なことだなっていうふうに一番感じています。

 あまり「働いてる」っていう気持ちじゃなくて、本当に自分がショースケーターとして滑りたいっていう気持ちで毎日過ごしているので、それにやりがいを感じますし、どんなにきつくてもやっぱり好きなことをやるっていうのは、なんだかんだ乗り越えられるというか。そこが一番楽しいことかなって思います。

江川

江川

スケート靴のひもを結ぶ(プレジャー・ビーチ・リゾート提供)

自分のチャームポイントって?

     ―せっかく6人で話しているので、この6人の中でお互いに聞いてみたかったことって、どなたかありますか。

前山 千尋

この記事を書いた人

前山 千尋 (まえやま・ちひろ)

デジタルコンテンツ部記者。2007年入社。青森、京都支局を経て、文化部で美術や建築、教育、ジェンダー問題などを担当してきた。山梨県出身。

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